70名の結集で 対労働局行動に取り組む(11/4)

 11月5日、70名の日雇い・野宿の労働者の結集で、交渉を軸とする対福岡労働局行動に取り組みました。

 

 私たちは、8月の日雇い団結夏祭りに際し、福岡労働局に要求書を提出していました。今回の交渉は、この要求書に対して労働局が回答する場として設定を要請し、労働局が応えたものです。同じ日に、福岡県(労働部)にも同趣旨の要求書を提出しています。


◇要求の趣旨:「日雇い・野宿の労働者のための公的就労対策事業を起こすよう求める」

 

①「東京都が山谷で行なっている『特別就労事業』のような、日雇い・野宿の労働者のための公的就労対策事業が行なえるよう、本省とともに検討すること」

②「公的就労対策事業が行なえるよう、福岡県や福岡市に協力して、必要・可能な措置を講じること」

③「以上の内容について、早急にわれわれとの話し合いの場を設けること」


 午前10時30分、合同庁舎(博多区)向かいの中比恵公園に、日雇い・野宿の仲間たちが集まりました。福日労の仲間が要求書を読み上げ、その内容を全体であらためて確認した後の11時頃、全体の熱い拍手で交渉団3名を送り出しました。

1.労働局による回答


 労働局からは、総務部の企画室、職業安定部の職業対策課、雇用保険課、労働保険徴収課、地方訓練受講者支援室などの職員が出席していました。私たちの要求項目に対する回答は、以下の通り。

 

①「労働局は独自の財源を持たないので事業は困難」、「要求の内容は、本省に伝えます」

②「要望があったことは、福岡市と福岡県に伝えます」

③「労働局は独自の財源を持たないので、公的就労対策事業の実施が前提となる話し合いはできません」


2.回答に対する交渉団の追及

 

 労働局の回答に対して、まず以下の資料を提出しました。

・山谷の城北労働福祉センターにおける「求人および紹介の状況」

・東京都の「公共事業への日雇い労働者吸収要綱」

・上野職安の玉姫労働出張所における「特別就労事業」に関する文書

 

 これらの資料を基に、2点に絞って追及しました。

 

①東京都が行なっている公的就労対策事業としての『特別就労事業』は、『失対事業方式』とは違い、東京都が管轄する施設・土地などの維持・管理・補修などに関わる公共事業について、山谷労働者を一定程度雇い入れることを条件に、東京都が民間業者に発注しているものである。

 私たちは、「国や県、市が発注する公共事業の中に、日雇い・野宿の労働者が就労できる独自の枠組みを作る」ということを要求しているのであって、福岡労働局が独自の予算を使って独自の公共事業を起こすよう求めているわけではない。また、そのために労働局やハローワークが果たすべき役割は大きいはずだ。

 

 労働局側は、「失対事業方式はとらない」、「独自の財源を持たない」ということを念仏のようにくり返せば、今回の交渉も乗り切れるとタカをくくっていたのでしょう(※1)。予期せぬ展開に言葉を失い、渡された資料を食い入るように見ては、交渉団に対し質問をしてきました。まったくの勉強不足というほかありません。

 

②現在の「ハローワーク」が、日雇い・野宿の労働者が就労する条件をまったくと言っていいほど整えていない。「仕事はハローワークに行って自分で探せばいい」という行政の物言いは、日雇い・野宿の労働者の不利な就労条件を、全く無視したものである。

 

 まず、長年日雇い労働に従事してきた労働者にできる仕事は、実際上限られています。その上で、紹介された仕事がその人にとって実務をこなせる内容であったとしても、その仕事に就くためには、面接、住所、電話、賃金の支払い方法、年齢制限などの条件が立ちはだかっています。「面接があれば、着ている衣服ひとつとっても不利」、「野宿をしている、あるいは野宿をしていた時期があると言うと、採用してもらえない」、「たとえ『日払い相談可』という業者と面接しても、『即決』ではなく、通知が後日に電話や郵送で行なわれるというのがほとんど」(※2)等々。

 

 これに対して労働局は、「何もしていないわけではない」ということをアピールしたかったのか、「年齢制限はしないように、業者にはお願いをしている」と答えましたが、「実際にはほとんどに年齢制限が付いている」と交渉団が追及すると、それ以上の返事はありませんでした。

 交渉団は、公的就労対策事業の実施を見すえても、「ハローワークにおける日雇い・野宿の労働者のための独自の求人条件に基づく紹介、独自の求人開拓、そのための独自の窓口と独自の職員が必要であること」を改めて突きつけました。

 

 こうしたやり取りの結果、最後に労働局が言ったことは、「福岡県に対して、公共工事の求人の際はハローワークを通すよう働きかける」ということでした。一歩前進と言えなくもありませんが、東京都の「公共事業への日雇い労働者吸収要綱」のようなものを福岡県に作らせなければ、さらには、求人条件が「即決」、「日払い」、「年齢制限なし」でなければ、日雇い・野宿の労働者の直面している現実に対してはほとんど意味をなしません。このことを徹底的に突きつけて、今回の交渉を終えていきました。

 交渉の後は中比恵公園に戻り、全体での報告集会を行ないました。

※1 これまでの交渉では、「失業対策事業のような、国が主体となって事業を起こす方式は採らない」、「民間企業における雇用の安定や拡充を促進する」という話を、各課の担当者が順々に、おうむ返しのように繰り返していました。こんなもので交渉時間の半分以上も稼がれてはたまらないので、今回は、冒頭に交渉団が「回答にあたっては、失対事業方式うんぬんの話は一切要らない、聞きたくない」と釘を刺したところ、労働局からの回答はわずか3分で終わってしまいました。

 

※2 組合が一度、ハローワークに行って調べた際の求人票で、「日払い」「日払い相談可」とされる20件ほどの求人のうち、「即決」はわずか一件でした。しかもその「即決」の業者は、以前、築港にも労働者を揚げに来ていたものの、あまりの賃金の低さに、労働者からまったく見向きもされなかった業者です。この日の求人も、土木・建築の作業で一日6,400円というケタオチ賃金であり、「繁忙期による臨時作業員」、「契約更新の可能性なし」という但し書きまで付いていたのです。